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これまで取組んでこられた主な研究、および現在取り組んでいらっしゃる研究について簡単にお聞かせ下さい。
自分の研究分野を説明するときに、私は「構造物性」という新語を使っています。 この言葉について簡単に説明しましょう。
物質は原子から成り立っています。物質の性質はどんな原子がどのように集まっているかで 最初の理解が始まります。つまり、物質の性質を理解する第一歩はこの原子の集まっている状態、 すなわち結晶構造によって理解されます。しかし、ほとんど同じように見える物質でも、 まったく異なる性質を示す場合もあります。このような場合には、構成している原子や分子 (原子が集まって一つの独立なユニットを形成している)の間の相互作用を理解する必要が あります。これらの、結晶構造や相互作用のネットワークを理解していくのが構造物性 という分野です。これらの観点から、金属、絶縁体、磁性物質、分子性物質、ナノマテリアル、 高分子、タンパク質結晶など極めて多岐にわたる物質群に関する研究を行っています。
そういった研究の面白さや重要性について語ってください。
研究の面白さは多岐にわたりますが、自然科学の未知の世界に迫ったときには言い知れぬ 感動を覚えます。世界中の研究者が頭を抱えている問題に対して、自分で解き明かした結果が 殆ど全ての解を与えることに気付いた時の感覚は、巨大なジグソーパズルの最後のピースを ぱちりとはめ込んだ時の感動にも似ています。しかし、ピースがはまった絵を一歩下がって見てみると、 実はその絵が大きなパズルの一つのピースだったりします。
例えば、論文として発表するときには、単なる絵だったりデータだったりしますが、 結晶構造を解くということは自然や科学の一端を「見る」ことができるので、 大変面白いですし 多くの人にインパクトを与えます。ところが、自分が解き明かした自然の姿を良く見ると、 その中に更に深遠な新しい現象が隠れていたりするわけです。いつまでたっても底が見えない という面白さは、何物にも代えられません。普段、ぼーっとしているときにもこれらのことが 頭から離れなくなることがしばしばです。研究者仲間で飲みに出かけると、研究の話が酒の肴に なることが良くあります。
大学時代(学部・院生)はどのような学生でしたか?
前半はアルバイトばかりしていました。様々な業種のアルバイトをしていました が、 中でもパソコンソフトの作成というアルバイトをすることで、最終的には学費や 生活費を稼いで博士後期課程に進学しました。幸運なことに、この大学院の後半で 研究にのめり込んだ時期に世界で「高温超伝導」のフィーバーが始まり、あっという間に 渦中に放り込まれることになりました。それからあとは、無我夢中だったというのが印象です。
学生時代にある超伝導体の構造を世界で初めて決定したときに、多くの人が同意してくれませんでした。 しかし、その後の様々な研究でこの解析が正しいことが分かってきて、多くの人の態度が 変わってきたことを今でもよく覚えています。現在でも名大のある研究室で研究されていることを 修士論文の発表会で聞けて、大変感動しました。ひとつひとつの研究成果が繋がって、 人と自然が持続して共存できる未来を創造していくのです。でも、その学生さんもきっと無我夢中で 研究されているのでしょうね。
学生へのメッセージは?
学生たちは可能性に満ちています。自分の内にある可能性を信じ、そして楽しみ、 豊かな学生生活を送ってほしいと思います。それぞれの個性を伸ばしながら、 世界を支えていくという大きな大志を持った人間になってほしいと願っています。 人は十人十色ですから、 一人ひとりの個性と適性を自覚して伸ばしていってください。
研究室の学生には何を学んで欲しいですか?
自分で面白いことを見つける経験をしてほしいと思います。 大学までの教育は詰め込まれるばかりでしたが、大学では自分から理解したい、 勉強してみたい、形にしたいという欲求が出てくるほどに面白いことが、 世の中に実はあるのだということを一つでもいいから経験してくれれば、成功だったと思います。 それが、研究室での研究であることが望ましいとは思いますが、そうでなかったとしても 切磋琢磨することで自分を高めていくことの面白さを経験することは、いずれ社会に出た後で 役に立つと信じています。
これから研究室を目指す人は、どのような勉強をしておくとよいでしょうか?
まずはいろいろなことに対して「面白い」と感じる心を大切にしてほしいと思います。 そしてその面白さについて立ち止まって考えてみてください。全てはそこから始まります。 もちろん、構造物性の研究を進めていく上では量子力学や統計力学の知識は重要ですが、 「量子論」という摩訶不思議な現象に興味を持てることが大切なのです。 「面白さ」は物理の奥深い世界へいざなってくれるでしょう。